国語を教えることになったら
塾講師と言えば、カフェ店員や居酒屋店員に並んで大学生に人気のアルバイトの一つです。
特に、勤務中に座ることができたり、肉体労働でなかったりと大学生ができるアルバイトの中では異色の存在です。
大体の塾では、最低限の頭脳の確認としてペーパーテストを行った後、形だけの研修が行われてすぐに自分の生徒を持つようになります。
仮に高学歴の大学生だったとしても、勉強をしっかり体系立てて教える側に回ったことがほとんどなく、困惑してしまうということは珍しくありません。
急に、「(形だけの)研修も終わったので、今日から80分授業をしてもらいます!」
とか言われて困らない方が難しいです。
自分の得意科目ならそれでもなんとか80分は持ちこたえることができると思いますが、それが自分の苦手科目だったら目もあてられません。
文系という理由だけで苦手な国語に回されてしまったら?
理系なのに人手不足に国語に回されてしまったら?
80分を冷や汗かかずに過ごし、何よりも高額な料金を払って授業を受けに来ている塾生のためにも、今回は教えにくい国語の教え方を解説していきます。
国語は教えにくい?
国語という科目にはどのようなイメージを持っていますか?
多くの人が、
「国語はセンス」
「勉強は必要ない」
「未だに勉強法がわからない」
といったイメージを持っているのではないでしょうか。
このイメージは、正直なところほとんど正解です。
残念ながら、幼少期の積み重ねの結果、本人の自覚的な努力なしに高得点を連発するような生徒もいます。
ただ、間違ってほしくないのは、国語というのは正しい読み方を訓練することで得点上昇が見込める科目だということです。
社会で年号を覚えたり、理科で実験法を覚えたりするのと同じように、国語で詰め込むべきは徹底した正しい読み方なのです。
そこで、塾講師がしなければいけないのは「文章の読み方・整理の仕方」を教えることとなります。
3ステップ・国語の教え方
国語は大きく分けて、
- 説明的文章
- 文学的文章
- 古典
の三つの単元に分かれます。
今回は、受験生が毛嫌いしやすい説明文の教え方を解説していきます。
1.対比構造に注目させる
まず説明文を読解するときにやってもらいたいのが、対比構造への注目です。
説明文は、様々な経験やデータを基に、筆者が主張を展開する類の文章を指します。
そして、最も重要なのがこの筆者の主張を読み取る部分です。
説明文において、すべてのテクニックはこの筆者の主張を浮き上がらせることだと言っても過言ではありません。
例を出しましょう。
「男性もスキンケアをした方がいい」という主張を展開したいとします。
そのとき、必ず男性がスキンケアをしないことによるデメリットを説明すると思いませんか?
つまり、スキンケアをする男性とスキンケアをしない男性を比較し(=対比)、片方の主張を強めているのです。
このような対比構造は、文章が余程短くない限りどの説明文にも現れてきます。
説明文を教えるときは、「何と何を比べているのか、それぞれの良い点悪い点は何なのか、最終的に筆者はどっち側なのか」というのを生徒に確認させながらホワイトボードに書いていくと良いでしょう。
2.逆接に注目させる
文単位で筆者の主張をあぶり出すのに最も効果的な方法は、「逆接への注目」です。
逆接とは、「しかし」や「けれども」といった表現です。
「~はAです。しかし、~は実はBです。」
といったように、主張を強調する役目があります(上の文ではBが本当に言いたいこと)。
生徒がイマイチ筆者の主張とその他の部分を切り分けられないようでしたら、逆接に注目するよう指導するといいでしょう。
3.解答の根拠をもう一度言わせる
多くの個別指導塾では、生徒に問題を解かせる→丸付けして解説という流れだと思いますが、全問正解のときなどは解説に困ります。
もちろん、本来は塾に来なくていいような優秀な生徒の場合は一人でドンドン解かせてもいいのですが、大多数の生徒は全問正解でもマグレのことが多いです。
そういった生徒には、解答の根拠を聞くようにしましょう。選択問題ならなぜアが正解でイは不正解だと判断したのか、といった感じです。
本当に理解できている場合はすらすら答えてくれますが、最後の二択で適当に選んだような場合は言葉に詰まります。
そうなったら、該当箇所を再度ゆっくり読みながら解説していきましょう。
補足1.具体例は無視させる
そこそこレベルの高い生徒には、限られた時間で高得点を取れるように鍛えていく必要があります。
そのテクニックの一つとして、具体例を無視させるというのがあります。
説明文では、数多くの具体例が出てきます。
しかしながら、具体例はあくまで理解の促進のために書かれているだけなので、解答の根拠にはなりません。
解答の根拠にならないところを貴重な時間を使って読ませるのは無駄なので、受験本番を意識して具体例を飛ばすテクニックを教えましょう。
具体例を読むのは、その前後に書かれている抽象的な文の意味が分からなかったときだけでいいです。
補足2.とてつもなく漢字が苦手な生徒は多い
これは塾講師を始めてからとても衝撃だったことなのですが、世の中思った以上に漢字を書けない人は多いです。
特にスマホ世代は予測変換に頼っていますので、読めても書けないという傾向に拍車がかかっているように感じられます。
貴重な授業時間で漢字の書き取りをさせることに疑問を覚える人もいるかもしれません。
しかし、勉強というより作業に近い漢字練習を宿題で出してしまうと適当に済まされます。
thisの意味もcanの意味もわからない生徒に英語を教えることは事実上不可能なことと同じように、漢字が出来ない生徒には授業時間を割いてでも練習をさせましょう。
まとめ
国語は実態が掴みにくく苦手意識を持っている生徒は多いです。
上記のように長文を整理する術を教え、国語という科目に苦手意識を持たない生徒を増やしていきましょう。
一度できるようになると成績が下がりにくい科目でもあるため、受験生になる前からトレーニングを積むことで効果はさらに増大します。